315MHz帯 VCO

ワイヤレスマイクやラジコンなど、電波を飛ばす機器には電波を作る回路が必要です。また、ラジオなどの受信機にも、周波数変換のために電波を作る回路が使われます。
VCOは必要な周波数の電波を作る回路で、音声やデジタル信号を電波に載せることができます。



[使用例]
・ワイヤレスマイク
・受信機(局部発振器)
・ラジコン
・テレメトリ/テレコントロール
・PLL回路


概要

・3Vで動作する315MHz帯のVCOです。0〜3Vの制御電圧で約290〜320MHzを発振します
・変調専用端子を実装しており、音声信号やデータ信号で周波数変調をかけることができます
・Qを高くするため、発振コイルには空芯コイルを使用しています
・基板を完全にシールドすることで安定した動作を確保しています
・端子間の幅はユニバーサル基板に合致しているので、そのまま実装が可能です


仕様

・動作電圧: 3V
・消費電流: 約14mA
・発振周波数範囲: 約290〜320MHz
・出力レベル: 微弱電波
・出力インピーダンス: 50Ω(計算値)
・変調入力インピーダンス: 220Ω
・外形寸法: 13×13×4mm(金蔵ケース入り)


回路図

 


部品配置

  


* ○はハンダ面の丸い銅箔を表しています
* ○のうち、太いはコイルを収める3mm径の窪みを表しています
* 部品のうち、片側がGNDになっているものは、基板のホールの中に部品を入れてGNDと接続します
* ユニバーサル基板ICB-288G(サンハヤト)を使用します


回路について

動作

基本回路はコレクタ接地型コルピッツ発振回路です。B-E、C-E間のコンデンサの値を大きく設定しており、電源電圧および周囲の温度変化に対する周波数安定度を出来るだけ抑えています。ただし、その分消費電流が多くなっています。
発振トランジスタとバッファにはfT=3GHzの高周波汎用トランジスタ、2SC3356を使っています。
1つのバリキャップダイオードを周波数設定と変調の両方に使用し、部品点数を削減しています。
共振部のコイルには手巻きの空芯コイルを使ってQの向上を図っています。チップコイルを使った場合よりも周波数安定度は高くなっているはずです。
0.5pという小容量のコンデンサで発振出力信号を緩衝増幅回路に入力する「疎結合」により、ロードプリング効果を抑えています。
緩衝増幅回路の出力インピーダンスは、計算上50オームに整合しています。

電源端子(VCC: Vcc)

・DC 3Vを供給します。定電圧レギュレーターで安定化した電源を推奨します。
 それより低い電圧でも作動しますが、発振周波数や出力が変わります。
・電源ラインに乗って来たノイズで変調がかかるのを防ぐため、10〜47uFのバイパスコンデンサを電源ラインに入れてください。
・パワー系回路やロジック系回路が混在する場合は、必ず定電圧レギュレーターを介して電源を分けます。
これは電源ラインに重畳したノイズで変調がかからないようにするためと、電源ラインの電圧のふらつき(電圧降下)の影響を防ぐためです。

出力端子(OUT: Output)

・電波の取り出し口です。
・出力信号は直流カットのためのカップリングコンデンサ(100p)を介して取り出してください。
 コイルを介して内部でVCCと接続しているので、GNDとのショートに注意してください。

変調端子(MOD: Modulation)

・電波に乗せたい信号を入力します。
・音声などのアナログ信号を入力する場合はカップリングコンデンサ(0.1uF〜1uF)を介します。(内部で抵抗器を介してGNDに接続しています)
・TTL信号などのデジタル信号を入力する場合、矩形波形をできるだけ保つためにカップリングコンデンサは大き目の47uFにします。
・信号源との間に変調度調整ボリューム(10kオーム)を挿入し、最適な変調度になるように入力信号レベルを調整してください。

制御端子(CON: Control)

・発振周波数を設定する電圧を入力します。
・発振周波数を手動で調整する場合はVR(10k)を接続し、電源(3V)の分圧電圧を0〜3Vの範囲で加えます。
 この場合は、制御ラインに1000p以上のコンデンサを挿入しないでください。制御電圧の変化に対する発振周波数の追従性が悪化します。
・PLL回路に使う場合は、ループフィルターを接続します。
・制御端子には必ず何らかのバイアスを加えておきます。
 これは、端子電位が固定されていないとバリキャップダイオードの容量が不安定になるためです。

GND(ケース)

・組み込み先回路のGNDには、ケースの側面(予備半田の部分)の2箇所以上で接続させてください。
 完成後は裏面には絶対に半田付けをしないでください。基板ホール内に実装した部品とGNDが離れてしまいます。
・RFアンプを接続する場合は、ケースの側面4箇所すべてで共通GNDと最短距離で接続します。

 


応用例

・ワイヤレスマイク

マイクで拾った音を315MHz帯の電波に載せて飛ばすことができます。音声は広帯域受信機で受信します。
可変抵抗器で発振周波数を設定します。周波数のズレを補正する回路が無いので、周波数安定度は良くありません。受信機側では”ワイドFMモード”で受信してください。
このVCOは比較的変調感度が高いので、コンデンサマイクからの音声信号を1段のマイクアンプで増幅しただけで十分に変調がかかります。半固定抵抗器を付けて受信音声の大きさ(変調度)を調整します。
出力端子に直流カットのコンデンサ(100p)を介して20cm程度のアンテナを付ければ、数十メートルの距離まで届きます。

・無線コントローラー

マイコンからのシリアルデータを入力してFSK変調をかけることができます。押したボタンによって異なるビットパターンが送出されるシリアルデータを電波に載せて離れたところにある回路を制御することができます。

・PLL回路

このVCOの周波数安定度は良くありません。周囲の温度や電源電圧などの変化で周波数がズレます。
PLLは発振周波数が絶対にズレない本格的な発振回路です。VCOの出力の一部をPLL ICに帰還させ、PLL ICからの周波数補正電圧を制御端子に入力することで水晶発振回路と同等の周波数安定度が得られます。


製作のポイント

 

1.基板の加工

部品を実装にはガラエポのユニバーサル基板(ICB−288G)を使います。
部品挿入面に銅箔テープを貼ってGNDにし、ハンダ面にチップ部品を実装します。

 ヤスリを使って基板を4×4マスに切り取り、コイルを収める窪みを3mm径のドリルで作ります。

 銅箔テープを貼り付け、ペンチなどのグリップのグリップで叩いて密着させます。

1mm径のドリルの歯を使ってホール内に部品を入れる箇所の銅箔に穴を開けます。

 

 
 このとき、銅箔の「カス」がちゃんと出ていることを確認してください。
 カスがホールの中に残っていると、ショートしてしまいます。


 

2.ホール内への部品実装

最初に基板のホールの中に入れる部品をハンダ付けしますが、これには多少テクニックが必要です。
裏面の銅箔に穴を開けたときにできた銅箔のカスがホール内に残っていないことを確認してから部品を埋め込んでください。
もし最初の通電チェックで回路が発振しなかったら、まずこれを疑ってください。ホール内でショートしてる可能性があります。

3.コイルの製作

1.5mm径のドリルの歯に0.4mm径のリード線を2回巻きつけ、指の爪で適当に隙間を開けます。

 

4.表面実装

まずは発振部の部品を実装し、電流計を通して通電チェックし、発振することを確認してからバッファアンプの部品を実装します。

 

5.端子の取り付け

リード部品のリードを4隅に取り付けて端子とします。

(スーパーX塗布の写真)

端子の付け根にスーパーXを塗布しておくとハンダ付けの熱で端子が取れにくくなります。


調整

組んだままでは発振周波数範囲が仕様とずれているので、コイルのインダクタンスを変えて発振周波数範囲を調整します。
*調整には広帯域受信機が必要です。複数の周波数が受信されることがありますが、受信機のアンテナを外すなどして、最も強い信号の周波数で確認してください。
*ケースを被せると発振周波数範囲が上にズレるので、調整の段階で発振周波数を6〜8MHzほど低く設定しておいてください。

1. 制御端子(CON)をGNDと接続します。(制御電圧=0V)
2. この時の発振周波数が 290MHz にできるだけ近くなるようにコイルの間隔を微妙に調節します。
3. 制御端子(CON)に3Vを加えます。(制御電圧=3V)
4. この時の発振周波数が大体 320MHz くらいであればOKです。


ケーシング

基板上の部品に触れたり導電体が接近したりすると発振周波数がずれます。
リン銅版を使ったフタで基板を覆うと安定度が増します。
*フタを被せると発振周波数範囲が上にズレるので、調整の段階で発振周波数を6〜8MHzほど低く設定しておきます。

 

 

 リン銅版を切り取り、内側の面積が13×13mmになるように折り曲げます。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

1mmくらいの厚さの紙を挟んでケースを被せます。
基板裏のGNDとケースをハンダ付けするので、プラスチックではなく紙を使います。
ケースは基板裏面のGNDと4箇所でハンダ付けします。

 

 

 

 

 

 

 

 


使用上の注意

・端子に熱を加えすぎると、端子が取れることがあります。端子にクリップを挟んで熱を逃がしながら手早くおこなってください
・完成後は裏面にハンダごてを当てないでください。ホール内の部品接触不良やショートの危険性があります

 

(C)北摂電子 Hokusetsu Electric

 

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