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 VCOとは?

電波を作る回路の1つ

電波を作る回路、”発振回路”のうち、加える電圧で発振周波数を制御する発振器を”電圧制御発振器”と呼びます。VCOはVoltage Controlled Oscillatorの略です。

周波数の安定度に欠けますが、簡易的な用途であればVCOだけで作った電波を使うことができます。可変抵抗器で制御電圧を変化させることで発振周波数を調整します。
携帯電話や無線LANなど、電波を使うほとんどの機器はVCOを使って電波を作り、フィードバック回路(PLL)と組み合わせて周波数安定度を確保しています。


電圧で周波数を変える発振器

回路の発振する周波数を変化させるには、共振器を構成するコイルかコンデンサの値を変えます。例えば、共振器にトラ ンスコイルが使われていれば内部のコアを回してインダクタンスを変えます。トリマーコンデンサが使われていれば、回して容量を変えます。
そのような、物理的にインダクタンス/容量を変える素子ではなく、”バリキャップダイオード”を使って発振周波数を変えるのがVCOです。
バリキャップダイオードは可変容量ダイオードとも呼ばれ、加えられる電圧によって電極間の容量が変わるダイオードです。種別としてはダイオードですが、その性質からコンデンサとして使われます。加える電圧が高いほどその容量は小さくなり、低いほど大きくなります。

 
<バリキャップダイオードの電極間容量の変化>

VCOは、発振回路の共振部を構成するコンデンサの一部に、このバリキャップダイオードを使うことで、それに加える電圧で共振周波数を変化させ、発振周波数を変える仕組みになっています。すなわち、バリキャップダイオードに加える電圧を高くすると発振周波数が上がり、電圧を低くすると下がります。


<共振部の1部を罵詈カップダイオードに置き換える>

また、電波に乗せたい(=変調をかけたい)信号をバリキャップダイオードに加えると、信号の振幅(=大きさ)の変化にあわせて 発振周波数が変化し、FM変調をかけることができます。


NOTE:
FMワイヤレスマイクには、たいていバリキャップ・ダイオードは使われていません。これは、発振トランジスタのベース端子に変調信号(マイクなどからの音声信号)を加え、トランジスタの電極間容量を変化させて変調をかけているからです。トランジスタもバリキャップダイオードと同じように、端子に加えられる電圧によって電極間容量が少しだけ変化する性質を持っています。

 


回路のしくみ


<VCOの回路例>

 

・発振周波数

Q1が発振トランジスタでR1でQ1の動作点を設定しています。
R2は電流制限というより、発振出力を取り出すための負荷の役割を担っています。ここで必要なのは高周波的な電位差なので、コイルでも構いません。
C11はバイパスコンデンサで、これによりQ1のコレクタ端子はGNDに接地されています。コレクタ接地型のコルピッツ発振回路です。
VCOに電源が投入されると、共振器の共振周波数で「発振」が起こります。VCOの発振周波数は、共振器のコイルの値(インダクタンス)とコイル(L1)に並列に入っているのコンデンサ(C1-C5)とバリキャップダイオード(D1)の合成容量で決まります。さらに、発振トランジスタの持つ電極間容量も合成容量に加算されます。
制御端子(CON)からD1に逆方向電圧を加えるとD1の容量が変化し、発振周波数が変化します。バリキャップダイオードに直列に入っているコンデンサ(C5)の大きさで発振周波数の変化幅が決まります。C5の値が大きいほど 変化幅が広くなり、小さいほど狭くなります。変化幅を広く持たせるほど、少しの制御電圧(D1にかかる電圧)の変化が大きな周波数の変化になります。
L2はRFC(Radio Frequency Choke)という、直流(DC)は通して高周波(RF)は通さない働きをするフィルターです。バイパスコンデンサとは逆に、高周波(RF)信号は通さずにDC(=制御電圧)を通す働きがあります。コイルが使われているのは、直流的に電位差を生じさせないためと、PLL回路で使う際にループフィルターの特性が変わるのを防ぐためです。
C6はバイパスコンデンサ(パスコン)です。つまり、L2とC6で、発振周波数に対して十分に低い通過周波数のLPFを構成しています。

NOTE:
制御電圧ライン(CON)へのパスコンとして大きな値のコンデンサを入れてしまうと、制御電圧がコンデンサに一旦充電されることになり、制御電圧の変化対して発振周波数が遅れて追従することになります。

 

・FM変調

バリキャップダイオード(D1)に直列に入っているR3は変調用です。このVCOの例では1つのバリキャップダイオードで周波数の制御と変調の両方が行えるようになっています。変調ライン(MOD)とGND(アース)の間には、このR3によって電位差が生じて変調信号の振幅(電圧)の変化に合わせてバリキャップダイオードにかかる電圧が変化、それに合わせて容量も変化し、FM変調がかかるようになっています。
なお、このR3に並列に入っているC7はRF用のバイパスコンデンサ(パスコン)です。これは、前述のように 直流〜AF(変調信号の周波数)では電位差を起こすためにR3が必要ですが、RF(=発振周波数)信号にとっては発振出力を消費してしまう抵抗成分に過ぎず、発振出力が低下します。そのため、RF(高周波)信号にとっては抵抗成分のないコンデンサでGNDとショートさせています。つまり、図中の点”a”はRF信号にとってGNDと同電位です。
このパスコン(C7)は、発振周波数にとって抵抗成分が小さくなるような値を選ぶのが理想ですが、映像信号など、周波数の高い信号を変調することも想定し、信号波形とレベルに与える影響を抑えるために小さめの容量のコンデンサを使います。また、デジタル信号を変調をする際に信号波形をできるだけ崩さないようにするためにも小さめの容量を選びます。

・緩衝増幅

Q2で緩衝増幅器(バッファアンプ)を構成しています。
Q1とQ2を繋いでいるC10は、発振回路から出力を受け取るためのカップリングコンデンサです。発振回路と接続するカップリングコンデンサは、発振回路をできるだけ孤立させ、外からの影響で発振周波数がふらつくのを防ぐために極めて小さな値が使われます。値の目安は、FMラジオ帯で3p、150MHz帯では2p、300MHz帯では0.5pくらいです。
カップリングコンデンサの値が小さいと高周波が通りにくくなり(容量性リアクタンス増加のため)、受け取れる発振信号が小さくなります。この小さくなった分を増幅して補うのが このバッファアンプの役目です。
L3はこのRFアンプの出力取り出し負荷です。抵抗器も使えますが、増幅度は下がってしまいます。

NOTE:
カップリングコンデンサの値を大きくすると、発振回路から取り出せるパワーは増えます。しかし、アンテナに触れるだけで発振周波数が大きくずれるなど、外からの影響を受けやすくなります。これは、外部の影響(容量やインダクタンスの変化)が発振回路に伝わることによるものです。これを”ロードプリング効果”と呼びます。

 

 

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