VHF帯映像送信回路 *この記事は2003年時点の情報です

ビデオカメラからの映像信号(NTSC)を5〜10CHで送信します。
電波の届く範囲で、送信した映像を家庭用アナログテレビやアナログポケットテレビで観ることができます。
*デジタルTVチューナーでは受信できません


[使用例]
・ラジコンやNゲージの車載カメラ
・ワイヤレス監視モニター]





概要

超コンパクトサイズ(30×20×15mm)なので、各種機器への組み込みに適しています。
変調にダブルバランスドミキサーを使用しており、高画質です。
動作電圧範囲が広い(3V〜)ので、CCDカメラといった接続相手と電源を共有し、送信システム全体をコンパクトにすることができます。
30mくらい離れても受信できます。


仕様

・動作電圧: 1.5〜6V   7〜36mA
・受信距離目安: 約 5m (1.5V)〜約30m(6v)  
・発振周波数: 約177MHz(5ch)〜211MHz(10ch)
・変調方式: AM変調(アナログ)
・サイズ: 30(W) * 20(D) * 15(H)mm


回路図

・”VCC1.5V”は、電池1本で動作させる場合の電源端子です。1.5V電源の場合、飛距離は5m程度になります。
・チョークコイルは、ある程度のインダクタンス以上であれば問題ないと思います。
 具体的には、0.2mm径のUEW線を、10KΩのリード抵抗(1/4W)に20回ぐらい巻けば適当なインダクタンスになると思います。
 もしくは、4.7uH〜10uHのリードインダクタでも大丈夫だと思います。
・回路図には表せませんが、各部品同士の配線は極力短くし、GNDはベタアースにします。
・それぞれのRFアンプ入力の1000Pにはチップコンデンサ(1608)を使っています。


回路について

概要

地上波アナログ放送の映像電波はAM変調波です。本来、AM変調は送信アンプのところで信号振幅に合わせて電波の強弱を起こすことによってかけます。
この送信機ではAM変調をかけるのにフロントエンドIC「TA7358P」を使っています。このICは本来FM受信用で、受信信号の増幅から第1中間周波数への変換に使われるもので、RFアンプ、局部発振回路、周波数変換回路が入っています。
このICでは、周波数変換回路としてダブルバランスドミキサーを使用していますが、信号を混合する際にAM成分が生じます。この性質を積極的に用いて映像信号のAM変調に使っています。ダブルバランスドミキサーは直線性が非常に良く、綺麗なAM変調がかかります。
内蔵の局部発振回路で作った送信電波と映像信号をダブルバランスドミキサで混合してAM変調を掛けます。変調のかかった電波をICから取り出し、2段の高周波アンプで増幅して送信します。IC自体が1.6V付近から動作するので、3Vでも使用可能です。

発振部

本来このICはFMラジオ受信用なので、内蔵の発振回路は約65〜110MHzを発振するように設計されています。
VHFのローバンド、つまり1ch〜3chはこの周波数範囲に入りますが、VHFのハイバンドで送信するには約2倍の周波数が必要です。
発振周波数は外付けのコイルとコンデンサの値で決まりますが、周波数を高くするにはこれらを小さい値にします。
コイルにはVHFハムバンドタンクコイル、通称”FCZコイル”「T−144」を使い、コンデンサは可能な限り小さい値としています。(これ以上小さくすると発振しません)周波数はタンクコイルのコアを回して調整します。

映像入力部

入力する映像信号はNTSCのコンポジット信号、つまり黄色いプラグの信号です。
変調レベルを調節するVRを介してICの4番ピン(本来は受信信号入力端子)へ入力します。
内部のダブルバランスドミキサーにてAM変調がかかります。

高周波増幅部

AM変調のかかった高周波信号は6番ピン(本来は中間周波数信号の出力端子)から出てきます。この信号は極めて弱いため、高周波アンプで増幅して実用的な距離まで電波が届くぐらい大きくします。
高周波アンプは2段構成で、fT=1GHzのトランジスタ”2SC1906”を使っており、負荷取り出し抵抗にチョークコイルを用いた非同調式です。この2段のアンプ出力で、30mくらいはカラー映像が届くぐらいのパワーを得ています。インピーダンス整合については全く考慮していません。2003年当時、手に入る高周波増幅ICは電源電圧が5Vだったので、ディスクリートで増幅回路を組みました。これにより3Vでの動作が可能です。
C1906とC3510のRFアンプの電源ラインには高周波デカップリングとして10Ωと0.1uFのLPFを入れています。

GND

回り込みによる異常発振を防ぐため、裏面を銅箔でシールドします。銅箔は、FCZコイルのケースに接続します。
また、電源などの機器との接続は最短距離で行います。
 

 


部品配置

<実装図>

*1、2、7ピンは使用しないので、最初に切り取っておきます
* ○は基板のホールを表しています
* 太いはドリルでホール径を2mmに拡げていることを表しています
*RFアンプの入力のコンデンサ2つ(”B”と繋がっている)はチップコンデンサです
*太い配線ラインはGNDラインです
* ユニバーサル基板「ICB-288G(サンハヤト)」を使用します

 

<外観図>


調整

アナログ受信が可能な家庭用テレビを使って本機のチャンネルを合わせます。

1)  +、−電源線、アンテナ線、映像入力ケーブルを半田づけします。映像入力ケーブルのシールド側はGND端子に接続します。
   動作を安定させるため、電源線および映像ケーブルはできるだけ短くします。(15cm以内が目安)
  

2) TVを5〜10チャンネルのうちの空いているチャンネルにあわせ、アンテナ端子に室内アンテナを接続します。
   音声は(消)にしておきます。

3) 本機に電源(1,5〜6V)と映像を入力し、周波数調節コイルのコアをゆっくりと回します。右に回すとコアは下にさがり、周波数があがります。左に回すとコアは上がり、周波数はさがります。映像が最もきれいに映るようにコアを回して調節します。
   *コアは非常にもろい材質でできています。コアをまわす時には下向きの力を加えないように(コアドライバの重みだけをかけるように)回して下さい。特に左に回す時には注意して下さい。   

4) 適当な明るさになるように、入力レベル調節VRを小さいドライバで回して調整します。
   右に回すと暗くなり、左に回すと明るくなります。

5) 本機を複数同時に使う場合は、送信するチャンネルが隣り合わないようにしてください。(例:5と7チャンネル、6と8と10チャンネル)


トラブルシューティング

・受信距離が短い
 
→ アンテナはまっすぐにのばして使用して下さい。どうしてもアンテナを短くしたい場合は、切らずにアンテナの一部をコイル状にしてください。ただし、巻き数が増えるほど、コイル直径が大きいほど、さらにコイル同士の間隔が狭いほど電波は飛びにくくなります。 

・空きチャンネルとは?
 → その地域でTV放送の無いチャンネルです。さだかでない場合は近くの家電店へ問い合わせて下さい。

・周波数を調整していたら、コアが上がってこなくなった
 → とりあえずコアはそのままにして、テレビ側で周波数調整をしてみて下さい。それでもだめならドリルの歯を使って基板の裏から押し出してください。

・受信映像の色合いがおかしい
 
→ .配線を確認して下さい。誤配線でなければ発振している可能性があります。基板裏面に金属が触れていないか、供給電源電圧が適正かを確認して下さい。


使用上の注意

・周波数調整コイルはもともと頻繁に回す目的で作られていません。一度チャンネルを合わせたら、できるだけ周波数は変えないで下さい
・発振を防ぐため、作動中はICや基板裏面に触れたり金属を近づけないで下さい。できればプラスチックケースに入れて使用することをお勧めします

 

(C)北摂電子 Hokusetsu Electric

 

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