315MHz帯 データ受信回路

電波に載せられたデータを受信する回路です。マイコンを使って簡単なデータ通信をすることが出来ます。
超再生検波回路を使っており、少ない部品でデータの復調が可能です。
ソフト次第でいろいろなワイヤレスシステムを構築することが出来ます。


[使用例]
・ラジコン
・ワイヤレスチャイム
・アクティブRFID
・無線式家電リモコン


概要

超再生検波方式の315MHz帯データ受信モジュールです。
FSKやASK、OOKなどのデジタル変調のかかった電波を受信し、データをTTLレベルで出力します。出力データはマイコンのデジタルポートに直接入力できます。
RFアンプを搭載しており、感度アップと不要輻射の低減を図っています。簡単な回路ながら安定性が良く、様々なワイヤレス回路に応用できます。


仕様

・動作電圧: 2.5〜3V
・消費電流: 20mA
・受信周波数範囲: 約290〜320MHz
・受信電波型式: FSK、ASK、OOK
・最大通信速度:1kbps
・出力形式: TTL (ビット”1”=1.5V、ビット”0”=0V @3V)
・アンテナ入力インピーダンス: 50Ω
・外形寸法: 27×13×6mm


回路図

 


部品配置図

 
* ○はハンダ面の丸い銅箔を表しています
* 太いはリードインダクタを収める3mm径の窪みを表しています
* 片側をGNDに接続している部品は、基板のホールの中に部品を入れています
* "LC"や"RC"は重ねて実装することを表しています
* "J"はジャンパー抵抗(0Ωのチップ抵抗)を表しています
* ユニバーサル基板「ICB-288G(サンハヤト)」を使用して実装します


回路について

動作

回路は4つのブロックから構成されています。

「RFアンプ」
アンテナからの信号を増幅して感度を上げる、非同調式の高周波増幅回路です。
S(1.2)特性によって、クエンチング回路からの発振信号がアンテナから輻射されるのを防ぐ役割もあります。
アンテナ入力部のマッチング回路により、アンプの入力インピーダンスを50Ω近辺に合わせています。
アンテナの長さや状態によりインピーダンスは変動するので、比較的広範囲で50Ωに整合するように設定しています。
アンプ出力のカップリングには小容量コンデンサを使用し、負荷(=アンテナ)の状態による共振周波数(=受信周波数)の変動を抑えています。


「クエンチング発振+検波」
RFアンプで増幅した受信信号を超再生検波します。トリマーコンデンサで受信周波数を設定します。
クエンチング成分(約十kHz)を十分に落とすため、検波出力ラインにπ型LPFをつけています。


「AFアンプ」
検波した信号をオペアンプを使った低周波増幅回路で約470倍(電圧比)に増幅します。
信号波形をできるだけ元の状態に保つため、カップリングコンデンサには容量の大きなものを使用しています。


「コンパレーター(データスライサ)」
増幅した検波信号をオペアンプを使ったデータコンパレーターで波形整形+TTLレベルに変換します。

検波出力(下)とコンパレーター出力(上)の波形

 

敷居値電圧には入力信号(検波信号)の一部をLPFで平滑した電圧を使い、受信信号レベル(=検波信号レベル)の大小に関わらず復調データを取り出せるようにしています。
モーターなどの外来ノイズ対策として、出力端子には220Pのバイパスコンデンサを付けています。

 

各端子

・VCC(赤)
 2.5〜3Vを供給します。モーターを使用するなど電源ラインが不安定になり易い場合は、レギュレーターなどで安定化した電源を使用します。

・ANT(青)
 アンテナを接続します。20cmのビニール線、またはピアノ線などを使用します。
 アンテナはまっすぐ垂直に立てられた状態で最大感度になります。

・DATA(黄)
 データ(TTL)を出力します。マイコンのI/Oポートに接続します。
 ビット”1”=VCC-1.5V、ビット”0”=0Vとなります。

・GND(黒)
 電源とデータの共通GNDです。


応用例

「ラジコン」

マイコンと315MHz帯の発振器(VCOやSAW発振回路など)を使って制御信号を送信するコントローラーを作り、この受信回路とマイコンで受信ユニットを組みます。モーターを回すためのモータードライバーを加えれば、ラジコンの送受信システムになります。

「ワイヤレスチャイム」

圧電ブザーやLEDを使って無線チャイムを構成することが出来ます。
ソフト次第で、複数の受信側(ブザー側)に対して押すボタンによって別々の受信ブザーを鳴らすこともできます。たとえば、3つのボタンを付けた呼び出し器をリビングに設置しておけば、3つの部屋のチャイムを個別に鳴らすことが出来ます。
送受信周波数が同じでも、それぞれの個体(受信側)を指定するビットを送信データに載せれば、個別の端末を制御することができます。

「家電制御リモコン」

マイコンの出力で100V電源をON/OFFするリレーを制御すれば、離れたところにある家電照明をON/OFFすることのできるリモコンを作ることが出来ます。マイコンのポート数次第で様々な照明の制御ができます。

「アクティブRFID」

個体識別データを間欠送信するアクティブRFIDのリーダーに使うことが出来ます。


製作上の注意

高周波回路は、上手に組まないと動作しなかったり不安定になったりします。
ホール内に実装する部品をすべて付け終わったら、検波部→OPアンプ周り→RFアンプの順番に組みます。下の調整方法参照して、各段階ごとに動作を確認してください。

完成した基板に熱収縮チューブを被せておくと、ショートなどアクシデントの防止になります。このとき、収縮チューブにはパンチで穴を開けておき、それを通してトリマーコンデンサにアクセスできるようにしておいてください。

(穴あけ→収縮後)


調整方法

*電源を投入してから復調信号が出てくるまで約10秒かかります

@ 電波源に任意の変調(アナログ信号でも可)をかけます。(無変調では調整できません)

A DETラインに外付けのAFアンプを接続し、スピーカーで復調音を聞きながら受信周波数を合わせます。
  →送信周波数に合ったらスピーカーから復調音が出ます

B 変調のかかった基準電波の復調音が、クリアかつ最大になるようにトリマーコンデンサを調節する。
  *トリマーコンデンサは機械的強度が無いので、受信周波数を合わせたらできるだけ触れないでください

C 復調されたビットパターンをオシロスコープで確認します。後述しますが、センター周波数を境に出力信号の位相、つまりビットが反転します。送信側と同じビットパターンが復調されるところにトリマーコンデンサをセットしてください。


使用上の注意

電源を投入してから回路が立ち上がるまで約10秒かかります

受信側のマイコンは、制御電波1フレームが受信されるごとにLEDを点灯するルーチンをプログラムしておきます。具体的には、プリアンブルの受信を確認したら点灯、確認できなかったら消灯するプログラムです。こうしておけば、正常にデータを受信している間LEDは連続点灯して見えます。回路の受信周波数が送信周波数とズレたり、送信機から離れて受信電波が弱くなると点滅するようになり、電波を全く受信しなくなると消灯します。
こうすることで、受信周波数の調整時や制御可能範囲の目安になります。

受信周波数がズレるので、基板上のチップコイル(27nH)に導電体が近づかないようにしてください。

アンテナはピアノ線や針金などの自立型をお勧めします。アンテナの状態によっては受信感度が不安定になるので、アンテナの形状が固定されるようにしてください。受信感度は、アンテナがまっすぐ垂直に立てられた状態で最大となります。

FSK信号の復調はスロープ検波方式で行うため、センター周波数を境に出力信号の位相が反転します。
スロープ検波とは、並列共振回路の山型の周波数特性を利用し、その”裾野”の部分(=スロープ)で周波数の変化を電圧の変化に変換する検波方式です。センター周波数より低い同調点と高い同調点の2箇所で信号が受信されますが、それぞれ検波信号の位相が反対となっています。
つまり、2つの同調点のうちのどちらかで検波されたデータは、”1”と”0”が反対になるロジック反転が起きていて、送信側と同じビットパターンが復調されるのはどちらか一方だけです。

無信号時には、内部ノイズによりランダムなビットパターンが出力されます。マイコンがランダムビットを制御信号だと誤って認識してしまい、誤作動してしまうことがあります。
送信データにできるだけ長いプリアンブル(識別ビット)を付加することで、CPUが無信号時のノイズか制御信号かを見極め易くなります。また、無制御時でも常に搬送波を送信しておくことで防げます。

”1”または”0”が連続すると変調自体がかからなくなることがあります。同一の符号(”1”か”0”)が8個以上連続しないように送信ビットパターンを設定してください。なお、”1”を”10”に、”0”を”01”で表わすマンチェスタ方式ならばこの問題はクリアされます。

 

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