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牛乳ビンのフタ |
このページでは、私が小学生のころ(90年頃)集めていた牛乳ビンのフタのコレクションをご紹介する。
当時は未使用の牛乳ビンのフタを使ったメンコバトルが流行っていた。
帰省の際に押入れから見つけたのを機に、記事にまとめてみた。
メンコはご存知であろう。紙でできた板っきれを叩き当てて相手をひっくり返したら勝ち。昔の子供の遊びである。
駄菓子屋などで売られていたメンコは生粋のバトルメンコだが、
牛乳ビンのフタをメンコに見立て、ペチペチやって戦わせるのは昔の子供間ではポピュラーだったと思う。
私が小学校3年〜4年の頃、つまり90年〜91年に牛乳ビンのフタのメンコが流行っていた。
我々の間ではペッチンと呼ばれていた。休み時間になると教室の後ろでペチペチやっていたものである。
ペッチンはただの牛乳ビンのフタではない。一枚一枚がファイターなのだ。
2名、もしくはそれ以上で代わりばんこに自分のペッチンを相手のそれに打ちつけ、
ひっくり返したら勝ち。相手の物を頂戴するというシビアなルールである。
ペッチンは牛乳ビンのフタである。
瓶から外した牛乳ビンのフタは、外周部が上に向かって反り返っている。
閉栓されるときに、ビンの飲み口のくぼみに沿って変形するのだ。
これがバトルでの弱点となる。上に反り返った外周部が力点、接地面が支点となり、
上からのチカラにより、ひっくり返りやすい。しかも側面から風圧を受けやすい。
この弱点を克服するため、我々は可能な限りの手を打って反り返りを矯正しようとした。
ベッドの足に敷く、蝋でコーティングを施す、冷凍する、お母さんにアイロンをかけてもらう、など。
とにかく”ファイター”を強く、たくましくするため鍛え上げようとした。
このような処置で反りはいくらかとれるのだが、完全に平らにすることは不可能である。
牛乳ビンのフタというのは、閉栓時に強力な力で瓶に押し込まれる。
さらに牛乳の水分と結露で水気を含み、完全に反り返った状態に変形固定されてしまう。
どんなに手を加えたって、所詮は厚紙。閉栓後は変形しているのだ。
それならば、
フタにされる前の牛乳ビンのフタならばどうだろう!?
というわけで、ここからが本題である。
牛乳ビンのフタのメンコは割とポピュラーだったと思うが、我々の地域のペッチンは違う。
ペッチンの戦力を追求する我々が使っていたのは、フタにされる前の牛乳ビンのフタだったのだ。
しかし、そんな物をどのようにして入手していたのか?
それは、
返信用切手を同封した「新品のフタをください。」という手紙をメーカーに送るのである!
乳業にネダるのだ。
手紙の依頼文には、
「友達は持ってるのに自分だけ・・・」とか、情に訴える文書を子供ながらに一生懸命考えていたに違いない。
謙(へりくだ)ろうとし過ぎるあまり、変な敬語も連発していたと思う。
中には返信用切手を同封せずに手紙だけをよこす愚か者もいた。
無論、そのような子には送ってもらえない。
このような新品のペッチンは”判なし”と呼ばれていた。
牛乳ビンのフタの中心には必ず、賞味期限を表す日付が押印されている。
ところが、瓶のフタにされる前には、まだその日付印が押されていない。
つまり、判子が無いから”判なし”なのだ!
我々の間では判なしが流通していた。
バトルで、交換で、またはお詫びのしるしに。
私自身、「”大山”あげるから許して!」で許してもらったことがある。
判なしは、貨幣的な役割を十分に担っていたのだ。
このように判なしは、バトル性を残したままコレクション要素をも兼ね備えていた。
ところで、判なしを見たことがある方は、ほぼ皆無であろう。
マーブルチョコレート。あの円筒パッケージの両端の栓を外から押して取り出してみてほしい。
この栓は厚紙でできているのだが、木片チップのように堅い。落とすとオセロの駒のような乾いた音がする。
まさにこれが判なしそのものである。質感が分かってもらえるであろう。
乳業にねだって送ってもらうか、バトルで獲得するか。いづれにしても判なしを入手するには手間がかかる。
そんな中で、ユーズド(つまり”判あり”)をうまく加工して”ニセモノ”をこしらえ、それを判なしだと言い張るつわものもいた。
賞味期限印を擦り消し、前述のような矯正処置を施し、あたかも判なしであるように仕上げようとするのだけれど、
どんなに手を尽くしてもニセ物であることは誰の目にも明らかだった。
まさに錬金術である。使用済みのフタは全く別の物質で出来ていると言っていい。
休み時間になると、教室の後ろに男子が集まりバトルが始まる。
スーパーのビニール袋に入れて持ってくる者もいれば、カンペンケースに入れてる者もいる。
私はサンリオの巾着に入れていた。
特筆すべき点は、普通のメンコバトルのように上から叩きつけるのではないということだ。
判なしはそんな攻撃ではひっくり返らない。
そうではなく、ちょうどテニスのスイングのように後ろに大きく振りかぶり、斜めから投げつけるのである。
攻撃で相手の判なしがひっくり返り、なおかつ自分の判なしが表を向いていたら勝ち。ひっくり返したものが手に入る。
もし自分のもひっくり返ってしまっていたら、あいこである。
判なしは最強のペッチンである。防御力が高く、なかなかひっくり返るものではない。それだけにバトルは白熱する。
バトル中に遠くにすっ飛んで行き、そのまま行方不明になるという悲しい事もある。
そんな時の対戦相手の気まずさったらない。一緒に探してあげるのだが・・・。
判なしコレクション |
それでは、現存する私の判なしコレクションの中から選りすぐりをご紹介しよう。
コレクションの判なしの乳業は、地元山口県内はもとより、長崎、大分、愛媛、広島、島根、鳥取、大阪、茨城、北海道などにわたる。
基本的に判なしの価値は地元からどれだけ遠くにある乳業かで決まっていた。
ちなみに、脆弱性を排除するためにプルタブを切り取る者が多かったが、私は残しておく派だった。
「チチヤス特別牛乳」
これは最も流通していた判なしである。したがって価値が一番低い。私自身も34枚を所蔵している。
チチヤス乳業は広島県大野町にあり、私たちの住む山口県岩国市から近い。
大量に流通していた理由として、現地で直接大量入手した者が複数いたからだと思われる。
チチヤスは工場見学者を随時受け入れていた。
「チチヤスコーヒー」
上の特別牛乳と違い、こちらはコーヒー牛乳ということで少しだけ価値は高かった。
だが下の判なしを見てほしい。
表 裏
緑色が付いてしまっている。
これは、当時科学クラブに所属していた私が作ったスライムの材料が付いてしまったのだ。
こうなってしまうと価値は激減してしまう。
「その他のチチヤス牛乳」
上記以外のチチヤス製品は、なぜか流通量が少なく、価値があった。
「重村コーヒー」
重村牛乳は小学校区内に存在した乳業である。私の家からも割と近かった。
近所に住む者もいて入手性が高く、大量に流通していた。当然価値は極めて低い。
中には、工場に忍び込んで失敬し、郵便受けに100円を置いて逃げた者がいたらしく、
学校で問題になった。そいうこともあり、この判なしは思い出深い。
「ヒカリ均質牛乳」
山口県光市にある乳業。ヒカリ牛乳は我が小学校の指定牛乳だった。
そのため比較的多く流通しており、価値は高くない。
「津通牛乳」
岩国市内津通(つづ)町にある乳業。同じ市内だが、中くらいの価値。
私の中学校の指定牛乳だった。
(もちろん中学生になる頃には判なし文化は消えていた)
「津通コーヒー」
津通牛乳のコーヒー牛乳版。すべての判なしに共通する法則→「コーヒーになると価値が上がる」。
牛乳を出している乳業は、コーヒー牛乳も製造している場合が多い。
「カミムラコーヒー」
同じく市内にある乳業で、牛舎が国道(188号)沿いという騒々しい所にあった。価値は比較的低い。
もちろん中学になって分かったことだが、部活の先輩の家が営んでいた。
「玖珂牛乳」
当時は岩国市に接していた玖珂郡。(現在は岩国市と合併)
流通量が多かったようで、単体の価値はそれほど高くなかった。
しかし、ここのフタはユニークで、賞味期限の日付を押印する代わりに最初から曜日が印刷されているのだ。
つまり、「次のX曜日までが賞味期限」となっている。この方式は県内の他乳業でも採用されている。
日曜日から土曜日まで。1週間すべてをコンプリートした者は少なかったのではないかと思う。
なお、コーヒー牛乳は、やはり価値が高かった。
「大山シリーズ」
鳥取県にある大山乳業の判なし。大山のネームバリューを如何なく発揮している。
大山シリーズは私が唯一手紙を出して入手した判なしでもある。(数種類を2枚づつ送ってくれた)
大山乳業から判なしが届いた時、次の日に学校に行くのがすごく楽しみだった。
元々ほとんど流通していなかっただけに、このシリーズはどれも価値が高い。言わば判なしのエリートである。
その希少性からバトルに使うことは控えられた。専らトレード用である。
「北海道保証牛乳」
最も遠い地域の乳業であるだけに、価値は極めて高い。
希少性からバトルに使うことは控えられ、トレードに使われた。
変り種の判なしはバトルに使われることが滅多にない。そのため非常に価値が高い。
「クロレラ」
クロレラのビンは小さいため、判なしも小さい。そのミニサイズから、レアもの判なしの真骨頂といえる。もちろん価値は高かった。
小さすぎて不利なため、バトルには使われなかった。かわいい判なし。
「パワーヨーグルト」
ヨーグルトのビンの口は大きいため、判なしも大きい。そのビッグサイズから、レアもの判なしの真骨頂といえる。
安定性は群を抜き、バトルには有利だが、対戦相手には嫌がられた。
「パワー」という文字が対戦相手を威圧したことだろう。
「みどりくじう高原牛乳」
なんと、日付印が押してある!判なしではないではないか!
いや、ボディー自体は確かに判なしを呈している。
実はこれ、日付押印後に製造ラインからスピンアウトした、激レア中の激レアなのである。
もちろん永久保存版。
シンプルな1色刷りから、ちょっぴり凝った2色刷りまで。字体もレイアウトも様々である。
「ヒカリブラボー」
「ブラボー」というだけあって豪華な2色刷りである。
保存状態が良くないのが悔やまれるところだが、
劣化具合がレトロな字体とマッチして、なんとも言えない哀愁を醸し出している。
「ゴールドサワー」
「ゴールド」というだけあって豪華な2色刷りである。字体も親しみやすくてナイス。
だが横から見てほしい。1部が剥離してしまっているのだ。
こうなると残念ながら価値は急激に下がってしまう。
「大山カフェ・オ・レ」
抜群のセンスを見せる大山カフェ・オ・レ。
牛乳ビンのフタとは思えない字体と、大胆なデザイン。
区切り文字がエレガンスな雰囲気をさらに盛り立てる、セレブ系判なしである。
また、日付印箇所がないことも、他を寄せ付けないアウトスタンディング・エリート・ステータスである。
「名糖フルーツ」
フルーツ牛乳ということで、オレンジのシルエットがあしらわれている。字体もレトロでナイス。
「保証オレンジ30」
オレンジの果肉が日付印スポットにあしらわれている、遊び心のある1枚。
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